熊本(合志市、光の森)の小児科・小児外科 Leeこどもクリニック 〒861-1115 熊本県合志市豊岡2000-33

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2015.01.24 葛西手術と肝移植

胆道閉鎖症の治療法の話しです。

胆汁の出口がないままだと肝臓は肝硬変となってしまうので、胆道閉鎖症のお子さんは1歳前後で命を失っていました。葛西手術が開発される前までは胆道閉鎖症は不治の病だったのです。運良く助かるのは「吻合可能型」と呼ばれる閉塞のタイプのみ(全体の1割程度)で、大多数の胆道閉鎖症(吻合不能型)は手の施しようがありませんでした。

1955年、当時東北大学の講師であられた葛西森夫先生が肝門部腸吻合術を開発されて以降、胆道閉鎖症は不治の病ではなくなります。いまだ葛西手術は世界標準の手術法であり唯一の根治術です。
ただ葛西手術が世界標準となるには開発から10年近くを要します。その一番の要因は、肝門部(肝臓の出口一帯を指します)に腸を覆うように縫いつけて胆汁の流れ道にするという手術法がにわかには信じがたかったことにあると言われています。

葛西手術が世界標準となるまでの間に、ピッツバーグのスターツル先生は胆道閉鎖症の治療法として肝移植の研究・実施を行うようになります。1959年のイヌを使っての実験から、1963年のヒトでの実施、1968年以降の長期生存例に至るまで、10年近くを要してようやく肝移植が現実的な治療法として確立されることとなったのです。

このように小児外科の黎明期に胆道閉鎖症の治療法として、葛西手術が日本で生まれ、肝移植手術がアメリカで開発されることとなったのです。
今では成人に対して行われることの方が多くなった肝移植の技術ですが、その開発の動機は胆道閉鎖症のお子さんを治したいというものでした。

残念ながら葛西手術を受けても4割近くのお子さんは自分の肝臓では一生を全うすることが出来ません。その場合には次の治療法として肝移植を選択することとなります。院長のいた熊本大学は小児外科と肝移植を同じ教室で行っている数少ない医局ですが、肝移植の開発された歴史を考えると不思議なことではないことがお分かりいただけると思います。

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